Wednesday 7 November 2012

イギリスの医療制度その2

2000年にWHOが出したランキングによると、医療制度の世界一はフランス。日本は10位でイギリスは18位です。
(リンク:http://en.wikipedia.org/wiki/World_Health_Organization_ranking_of_health_systems
このランキング、ランキングの出し方とランキングそのものの有効性が批判されてもうやらなくなったそうです。医療制度みたいに複雑なものをランキングにするのは一筋縄ではいかないのでしょう。

個人的にはスンバラシイと思ったNHSですが、やっぱりいろいろ問題もあり、中でも私がトホホと思ったのは、医療が細分化されすぎてていろいろ余計に手間と時間がかかってしまうところ。
例えば、妊婦は助産師さんに定期的に検診してもらいますが、薬を処方してもらいたかったら医師と別に予約を取らなければいけません。採血は看護師か医師にまた別予約。超音波検査は別の病院でまた別に予約。社会人は忙しいので全部一緒にやってよ〜!て感じです。しかも、定期検診をしてくれる助産師さんと分娩を手伝ってくれる助産師さんは別の人です。このへん、もうちょっと要領よくやってくれたら患者側だけじゃなくて医療側の手間暇も大分省けるのになぁーと思います。
目の調子がなんとなく悪いなぁと思って助産師さんに相談したら、まず主治医と予約して主治医から眼科に推薦状を書いてもらうように言われました。もう、この時点でトホホ。症状をググってみたら、妊娠中はホルモンのバランスが変わって、眼球の周りの液体がちょっと減ったりすることがあって、目がぼや〜っとすることがあるとのこと。あと、貧血だったら目がかすんだりもしますよね。なので、眼科に行ってもしょうがないと思ってそのままにしていたら自然に治りました。こういう総合的な診断をド素人の患者がやってるという時点でトホホです。

逆にすごくいいなーと思うのは、ずばり無料なところ。ホームレスの人もゆきずりの外国人も、命に関わる場合は等しくちゃんとした医療サービスが受けられるのは人道的にすばらしいと思います。
それから、情報開示が徹底されていて、個人の意見をとても尊重してくれるところ。例えば、いつから産休を取りたいか、どこでどうやって生みたいか、陣痛の痛み止めを希望するか、もし希望するなら何がいいか、赤ちゃんは授乳で育てたいか、などなど全て妊婦が決めて医療スタッフに伝えます。医療スタッフが上から指示を出すことは全くありません。その代わりそれぞれどんな選択肢があってどういうメリットやデメリットがあるのか、医療スタッフ側が勧めたい選択肢とその理由を詳細に伝えてもらえます。
私は予定日の10日前まで出社しましたが、予定日から2週間〜4週間前から産休に入る人が多いようです。私を担当した助産師さんが「破水した日まで働いてた」というツワモノだったこともあったかもしれませんが、「産休をいつ始めるかは完全に個人の自由です。肉体的にも精神的にも大丈夫だったらギリギリまで働いて全く問題ありません。」と太鼓判を押してもらい、「普通の人はこのくらいから産休取りますね」なんてことさえ言われませんでした。「くれぐれも無理はしないように。ストレスが多いと感じたり疲れたらすぐに休むこと。出社するのが困難に思えてきたら産休に入ってください。自分の体の声を聞くようにしてください」と言われました。でも、いつ生まれるかわからない時期まで働くと会社に迷惑がかかるのでは?と思って聞いてみると、「初産はたいてい予定日より遅くなるから大丈夫よ〜。ハッハッハ!」と一笑に付されました。そういうアナタはいきなり破水して仕事にこられなくなった超迷惑な人だったのでは...と心の中でちょっと思いましたが。

個人の意見をとても尊重してくれるといえば、イギリスはさすが個人主義の発祥の地だなぁと感心することもしばしば。個人主義そのものに関しては、いろいろ一長一短なのかもしれませんが、表現の自由に対する尊重と勇気と成熟さは、イギリスさすがだなぁと思います。
2010年にインドに二ヶ月ほど旅行した時、インド版Times誌を読んだら、めっちゃポジティブなことばっかり書いてあって、「どこ?このステキな国は?」て思ってしまいました。インドはまだ自国の批判がマスメディアに受け入れられるほど安定していないんだなぁと感じました。逆にイギリス版Times誌は辛辣な批判でいっぱい。自分の国の批判ができるというのは、その国が発展していてある程度安定している証拠だなーと感じます。表現の自由とかジャーナリズムに関しては、日本やアメリカ、オーストラリアとかと比較しても、断然イギリスが成熟しているように思います(こんなこと書くとイギリス人から「そんなことない、イギリスのジャーナリズムはめちゃくちゃだ」とか逆に反論されそうですが)。イギリスでニュースとか風刺コメディーとか見すぎると「なんてひどい国だ!」と感じてしまうのが難点ですが(苦笑)。

日本人って欧米に対する憧れというかコンプレックスがあるよなーと前から思ってましたが、「ここよりどこか違うことろ」に対する漠然とした憧れやコンプレックスってどの国の人(特に若者)にもあるみたいですね。例えば、メルボルンではロンドンやニューヨーク、パリみたいな大都市に対して「オーストラリアみたいな田舎と違ってススんでるんだろうなー」て思ってる人にたくさん会いましたし、私が日本人だからというのもあってか、東京に憧れてる若者にもけっこう会いました。
ロンドンに移住してきた当初は「どこから来たの?」と聞かれて「オーストラリア」と答えると、「え?なんでそんなステキなとこからこんなとこに移って来たの?」て真面目に聞かれたり。ロンドンっ子に「ロンドンのいいところは?」て聞いたら「パリまで2時間で行けるところ!」と胸を張って即答されたり。いや、それロンドンじゃないし。
どこの国でも、生きてくのって結構大変なことで、漠然と「ここよりどっかいいところがあるはず」と思うのは人間の性かもしれません。「じぶんち」のよさって、ある程度年を取ってから気づくものなのかもしれません。
「日本に行ったことないけど、いつか行ってみたいんだよねー」とよく言われますが、そのときは「絶対行ったほうがいいよ!めっちゃいいところだよ。絶対気に入るよ」と本気で言うようになりました。いろんな憧れの地に行ってみて、オモシロイと思ったりいい感じに幻滅したりした結果、「やっぱ日本っていいなー」に落ち着いたのでした。ロンドンもいいですよ。いつか遊びに来てね〜。

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