Saturday 12 January 2013

世にも奇妙なママ・ワールド

例えば、「うちの子は寝付きが悪くて本当に苦労しているの。毎晩15分くらい車でドライブして寝かしつけてるのよ。」なんて言っているママがいると、「大変ですねぇ〜」と口で言いつつ、密かに「それは赤ちゃんのせいじゃなくて、自分がちゃんとトレーニングしなかったからじゃん...」とか思っている自分がいるわけです。
もともとガリ勉タイプで著しく育児オタク化している私は、育児本に書いてあった通りに「独り寝トレーニング」を愚直に数週間かけて行いました。「独り寝トレーニング」とは、赤ちゃんがベビーベッドで一人で眠れるようになるようにするトレーニングで、腕の中でスヤスヤ眠りかけている赤ちゃんをあえて眠りきる前にベッドに寝かせ、ベビーベッドの中で眠りに落ちるようにしむけるというもの。腕の中で寝かしつけている最中に「あぁ〜、眠りそう、っていうかこのまま寝てくれ〜!」と思っているところであえてベビーベッドに寝かせるので、赤ちゃんがバッチリ起きてしまうことも多く、また寝かしつけやり直しになります。それを赤ちゃんが眠るまで数回やり直すわけです。自分が疲れきっている時や赤ちゃんの睡眠を優先させた方がいいときを除いて、毎回寝かしつけの度にこのトレーニングをやります。最終的に赤ちゃんがちゃんと一人で眠れるようになるまでこのプロセスを数週間かけて100回くらい繰り返します。最近、愛彩は眠くなると、ベッドに一人で寝かせるだけで一人で眠れるようになりました。初めて独り寝に成功した時は、世界の中心で「愛彩が独り寝できるようになったよー!!」と叫びたい気持ちにかられました。
「車でドライブして寝かしつける」というのは、育児本に「多数の親がやってしまう間違い」として載っていたもの。そのリアル・ママに会ってしまい「いたよ、ここに!悪い見本!」とこっそり思ってしまったわけです。

要するに「うちの子がこ〜んなに優秀なのは、私の努力の賜物ザマすのよ。おほほほ。」って言いたいせせこましい育児オタクの自分がいるわけです。そんなせせこましい意地悪な自分になるくらいだったら、最初から育児本なんて読まずに努力なんてしないようがよほど感じがよいでしょう。

「なんでもかんでも、赤ちゃんのせいにするママって、どうかと思うんだよね。赤ちゃんじゃなくてアンタの育児のやり方のせいじゃないの?って意地悪だと分かってても心の中で思っちゃうんだよね」とマーティーにこぼしたところ、
「もしかしたらまり子の言う通り育児のやり方が悪いのかもしれないし、もしかしたら本当に赤ちゃんが100パーセント悪いのかもしれない。もしかしたら半分半分かもしれない。でも、よその家の事情は自分たちには何にもわかんないんだから、批判するのは意地悪だし無意味だと思うよ」とド正論を言われてしまいました。
マーティーったらやっぱり私の王子様。ちょっぴり惚れ直しモーメント。

狭いママ・ワールドに頭のてっぺんから爪先までつかっていると、自分の子が独り寝できたかとか、授乳に何分かかるとか、ものすごーく小さなことが重大に思えてきてしまいます。ロンドンで出会うママ達の多くは家族から遠く離れていて、みんなママ一人に対する大きなプレッシャーと奮闘しています。なので、みんなフレンドリーで協力的。お互いに助け合い、励まし合っています。ゲップの音を喜び合い、ウンコの音に笑い合い、スリングやオムツの銘柄の話で盛り上がります。そんなママ達の一人でも、こっそり批判しているなんて、腹黒いことこの上ない自分なのです。

別に独り寝トレーニングができていようができていまいが、10年後にはきっと普通の子供に育っているわけです。貧乏な家に育ったから成功したという人もいれば、裕福な家にそだって順調にエリートになる人もいる。天才モーツァルトは想像を絶するスパルタ教育を受けたと聞きますし、テレビ女優第一号の黒柳徹子の父親は女優になるなんてみっともないと思っていたそうです。モンゴルの一部の地域では、赤ん坊を縄でグルグル巻きにして地面にほおっておいて農業に励むらしいですし、アフリカのある地域では新生児にも火やナイフを遠ざけたりせず火傷や怪我をさせて学ばせるそうです。そういう赤ちゃんもきっとその地域で生きる知恵をちゃんと身につけて立派に育っていくのでしょう。子育てに正解なんてないのだから、よその人の育児法にケチをつけるなんてけつの穴の小さい事この上ない自分なのです。

子供は親の成績表じゃないし、親の努力が子供の幸せを保障するわけじゃありません。よそと比べたところで、自分や自分の家族がより幸せになったりすることもありません。
愛彩が健康で幸せそうなら本当に幸運なこと。よその家族を心の中で批判したり、比較するのは絶対にやめようと思いました。

まだまだ子供に手がかかるうちは、子育て以外のことをしたり考えたりする余裕があまりありません。でも、授乳中にインターネットでニュースをチェックするとか、お散歩中にポッドキャストで本を読むとか、愛彩を連れてアートギャラリーに行ってみるとか、ママ友以外の友達と会って赤ちゃん以外の話をするとか、頭が100パーセント育児にならないように気をつけようと思いました。
私の育児オタク化は、性分なので残念ながら避けられそうにありませんし、ネタがなんにせよなにかにハマるのはそんなに悪い事ではないかもしれません。でも、「それだけ」になるのがバランスが悪くて不健康なのだと思います。
愛彩のウンチの色よりも重要なことがこの世にはある!と認識しておくことが大切ですね。

ちょっぴり惚れ直しモーメントを提供してくれた今回のマーティーですが、「愛彩ってさ、他の赤ちゃんよりも断トツでかわいいよね。○○さんとこの××ちゃんなんて、めっちゃブサイクでかわいそうだよね」と思いっきりよその子と愛彩を比較してよその子を批判してますけどね。




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