Sunday 24 March 2013

パートナーのお仕事


イギリスの「当然こうあるべき」というイクメン像は、

産後直後は育児休暇を取り、弱っているママの看護と家事全部をやる。
積極的に育児に参加し、もちろんオムツかえなども率先してやる。
母乳の場合、最初の数週間はママに三度のご飯とスナックを用意する。(授乳が長くかかる場合やママが弱っているときは口まで運ぶ)。
ミルクや混合授乳の場合は夜の授乳を交代でやる。
仕事に戻った後も、ママが寝不足なようならできるだけ家事は自分がやる。
疲れているママにマッサージをしてあげる。
週末はママが「自分の時間」がもてるように半日〜丸一日は赤ちゃんを一人でみる。

と、なかなか要求されるレベルが高いように思われます。「理想のイクメン」じゃなくて「当然でしょ!」ていうレベルがこれですからね。出産前のクラスでも、助産師さんから「パートナーのみなさん、出産から回復するまでしっかりママの看護をしてくださいね。産後直後はママの言うことがどんなに理不尽でも全部聞いてあげてくださいね!」というアドバイスがありました。里帰りをするママはまれで、1−2週間ほどご両親がヘルプにきてくれるところが大半ですが、基本はカップルでやっていくところが多いロンドン。パートナーの役割はとても大きいのです。

とはいえ、「男女平等が進んでいるロンドンだし、こんなイクメンばかりに違いない」と思っていたら全くそんなことはなく...。ロンドンのママ会などではいかに自分のパートナーが役に立たたない薄情者か、よく話題になります。そんなロンドンママたちの心の叫びを聞いていると、気配りや几帳面さでいえば、日本の最近のイクメンのほうがよっぽどレベルが高いかも?と思ったりもします。

「育児休暇中なのにホリデーと勘違いして、ほっておくと毎日昼過ぎまで寝てるから、毎朝たたき起こしてたわよ」
「彼は料理ができないからいつも私が料理してたんだけど、出産直後はさすがに料理してくれるだろうと思ってたら、『僕のぶんの夕飯は心配いらないよ。適当にすませるから』て笑顔で言われて愕然としたわ」
「子供と遊んでてウ◯チの音がしたら『ウ◯チしたよ』て子供を手渡そうとするから、『そうなの?』て笑顔で押し返したわ」
などなど、「それはひどい」と思うような話や身に覚えのある話まで、この手の話はつきることがありません。どこの国でも旦那の悪口大会は盛り上がるんだナーと新鮮な驚きがありました。
もちろん、絵に描いたような理想のイクメンの話も耳にしますが、大半のパートナーが「当然こうあるべき」イクメン像とはほど遠いようです。男女平等が進んでいる(印象のある)イギリスでも、私が知っている限り、家事や育児のリーダーシップをとるのは女性だというカップルがほとんど。パパもママも育児休暇中で、ママは授乳でほぼ24時間赤ちゃんにつきっきりという時でも、ウンチのついた洗濯物はママがやるかママがキレるまで放置されるのが、「ふつう」のカップル事情のように思われます。

いろんなママたちの話を聞いているうちに、「当然こうあるべき」といわれているイクメンなんてイギリスにもあんまりいないんだ、と残念に思ったけどなんだか安心もしました。かといって、ママが不満や不公平感を無理やり押しこめるのも不健康。せっかくがんばってきたフェミニストの方々も報われません。不満をちょこちょこと小出しにすると、セクシーでラブリーな新妻(自称)がガミガミ母ちゃんに豹変。ピンク色の新婚生活がだんだん黄ばんでいきますし、不満を溜めて爆発させるとえらい騒ぎになりかねません。自分の気持ちに嘘をつかずに桃色のアモーレな結婚生活を維持していくにはどうしたらいいのか、けっこう真剣に考えてみました。というのも、愛彩が生まれてから何度か「えらい騒ぎ」を経験しまして...(←遠い目)。マーティーとは10年以上の付き合いになりますが、「ああ、はらわたが煮えてもつ鍋になってしまう〜!」と思うほどキレたのは愛彩が生まれて初めてでした。

そこで編み出したのが「夫は火星人だと思おう」作戦。男は火星人女は金星人というベストセラーのタイトルにヒントを得た作戦ですが、私の場合、女は地球人で男は地球の習慣を理解していない火星人という設定にしているので、上から目線です。フフフ。

例えば、オムツをかえてくれたのはいいけど汚れたオムツはそのままペロンと床に放置。バスルームには丸まった靴下とパンツが、ベッドルームにはズボンとシャツが、キッチンには開けたままのチーズやパンの袋などなどが放置。愛彩が生まれる前はなんとも思わずに片付けていましたが、連日寝不足が続いてヘトヘトになっているときに、空き巣に入られた後のようなバスルームに足を踏み入れると「ここを私に片付けろと?お前はどこの国の王様じゃ〜!わたくしめは貴国の召使いですか?!きぃぃぃぃ〜!」となってしまっていたのです。
そこで「ああ、火星では使ったものは翌日に片付けるのが普通なんだな」と思います。アホみたいですが、これがけっこう効果がありました。
夫は私と違う考え方と習慣を持った人なんだと再認識。ちらかったバスルームは「片付けといてね♡」というメッセージではなく、ただ単に使ったものをすぐにしまうという習慣がないだけ。もし私が片付けなければ本人はそれで気にならないし、気になったら自分で片付けるんだということがわかりました。
それまで、「やる気や思いやりがないから」「家事は女の仕事だと思っているから」やってるんだと思っていた行動も、「火星ではそういう習慣だから」だと気づくと怒ることもなくなりました。

火星ではお鍋の外側を洗う習慣はないし、シェービングクリームなどのフタは開けたままにしておくし、靴は何足かリビングに放っておくのが普通なようです。
火星の異文化にふれてびっくりしたり「ちょっと困るなぁ」と思ったとき、地球人にはふたつの選択があります。異文化を受け入れて自分でなんとかするか、火星人と交渉をしてみるという選択です。幸運なことに火星の公用語の一つは英語なので、言葉は通じます。「言わなくてもわかってほしい」なんて思うのは百害あって一利無し。交渉は礼儀正しく、辛抱強く、かつ巧妙にしなくてはいけません。間違っても火星人は常識がないなんて思ってはいけません。地球と火星では常識が違うだけです。
火星人が自分の習慣を変えてくれたり、変えようと努力をしてくれたら、それがどんなに世間で「当然」だと思われていることでも、感謝しなくてはいけません。誰にとっても習慣を変えるのはとっても大変なことなので。

そういう私も引っ越してからずーっと「この黒くて四角い物体はなんだろう」と思っていたものをマーティーに「この黒い箱みたいなの、かさばるから屋根裏に置いてもいい?」と聞いたら、「それ、スピーカーだけど...。」とびっくりされたことがあります。私だって夫からみたら火星人なのかもしれません。

我が家の火星人の困った習慣を暴露してしまいましたが、我が家の火星人は愛彩にメロメロで面倒をよくみてくれるし、いいところもたくさんあります。先日マーティーが愛彩をみながら、「愛彩が生まれるまでは、この世にあるハッピーの総量がちょっとだけ少なかったんだよね」と言ってるのを聞いて、ちょっぴり惚れ直しモーメントでした。

これからもよろしく。




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