Friday 18 September 2015

おねえさんになった愛彩

一番上の子供にとって、二人目の子が生まれるというのは、例えば夫に「新しい妻ができたんだ。もちろん、君のことは今まで通り愛しているけど、新しい妻とも一緒に暮らすことになったから、仲良くしてねー♪」と言われるくらい大ショックな事件らしい、と知り合いのママから聞いていました。

家に遊びに来ていたお客さんが帰る際に、上の子が下の子を「この子を持って帰ってくれない?」と頼んだり、親の気を引くために下の子をわざと叩いたりするのもよくあることだと聞いていました。

なので、愛彩は怜(二人目の名前が決まりました)を連れて帰ったらどんな反応するかな?と興味津々でした。また、出産のため二晩も家を空け、保育園の送り迎えもずっとマーティーにやってもらっていたので、私に対してもどんな反応するかな?とドキドキしつつ帰宅しました。「ただいま〜」と家に入ると愛彩が「ママ〜!」とニコニコ駆け出してお迎えしてくれて、生まれてホヤホヤの怜を見せると「かわいいねぇ〜」と舌足らずの日本語で言って怜の頭をそーっとなでなで。まさに理想的な展開。期待以上のポジティブな反応でした。

もともと、愛彩はお母さんごっこが大好きで、お気に入りのぬいぐるみには全員オムツをはかせ、「泣いてる〜」とか「お熱がでちゃった」などと言っては、抱っこしたり、おもちゃのベビーカーに乗せたりしてかいがいしくお世話をし、ことあるごとにオムツの取り替えを手伝わされていました。その一方、私が他の子供を抱っこすると自分も私によじ上って来る焼きもちな面もありました。なので、愛彩が怜が生まれてどんな反応をするか、本当に分かりませんでした。

怜との初対面は大成功でしたが、私のほうも気をつけて、愛彩が焼きもちを焼かないように、怜が泣いていたら愛彩に「怜くん、お腹がすいてるかもしれないから、おっぱいあげるね」と一度ことわってからおっぱいをあげたり、愛彩に絵本を読んでいる時などに怜が泣くと、怜にむかって「怜くん、おねえちゃんにご本を読んでるから、ちょっと待っててね」とわざと待たせたりしました(怜くん、ごめんよ〜。強く育ってね。)。

愛彩は初めての子供だったので、イギリスで奨励されている子育ての方法を真面目に守って、なるべく添い寝をしないようにしていましたが、愛彩との経験から添い寝するほうが最初は楽だと分かったので、怜とは生まれてからしばらくは添い寝することにしました。なので、ちゃんと自分の部屋で一人で寝ている愛彩が、朝起きて私たちの寝室に入って来ると、私が怜と一緒に寝ているのを目撃するわけです。毎回なんだか浮気現場を見られたようなうしろめたさがあります。

そんな浮気な自分も目撃されつつ、できる限り愛彩に気をかける時間を減らさないようにしようと心がけたのが多少は効果的だったのか、愛彩の世話好きな上のんきな性格のおかげか、最初の数日はウソのようにトラブルもなく過ぎました。でも私はどっかの時点でストレスや焼きもちが表面化するんじゃないかなとなんとなーく身構えていました。

その日は突然やってきました。夕ご飯の後おもちゃで遊んでいた愛彩にマーティーが「もうおねんねの時間だから歯磨きしよう」と言うと、いつものように「やだ〜」と言う愛彩。マーティーが「だめだよ、もう寝る時間だよ」とおもちゃを優しく取り上げようとすると、いきなりうわーっっっ!と号泣。その時なんのおもちゃで遊んでいたか思い出せませんが、とにかく「私はこのおもちゃで遊ぶ!」と叫んで地団駄をふみながらうぎゃーっっと耳をつんざく声で泣き叫ぶ愛彩。普段あまり泣いたりしないほうなので、「???」とびっくりしてパニクるマーティー。私に向かって「どどど、どうしよう?」的な視線を向けてきました。私は「ああ、やっとこの時がきたか!」と思い、愛彩を抱っこしにいきました。「よしよし、がんばったね。大変だったね。泣いていいよ〜」と言うと愛彩は私にしがみつくように抱き返して、おいおい泣きじゃくりました。「ママが二晩もいなくて寂しかったよね?お迎えもパパになって、赤ちゃんがお家に来て、いろいろ変わっちゃって、愛彩は大変だったよね?」と背中をさすりながら言うと、泣きながらうんうんとうなずきました。「愛彩、えらいね。おねえさんになるの大変だよね。がんばったね」と繰り返し言いながら背中をさすり続けました。自分の微妙な心の変化やストレスの原因なんて、大人でもきちんと理解したり、ましてや人に向かって上手に言葉で表現するのは困難です。まだ二歳の子供ができる芸当ではないので、大人がちゃんと見て気づいてあげないといけないよなぁと(気づいてあげられないことが多いのですが)背中をさすりながら思いました。ひとしきり泣いた後は、いつも通り歯磨きをしてパジャマに着替えてすんなり眠ってくれました。

愛彩が眠った後に、マーティーが「愛彩、なんであんなに泣いたんだろうね?どんだけあのおもちゃで遊びたかったんだろうね?」と真顔で言うので、「この男は本当に女心がわからんな」と自分の夫に呆れる私でした。

その後も、一晩中寝ていたのが夜中に起きるようになったり、おしっこがトイレでできるようになっていたのにオムツでするようになったりと、いわゆる赤ちゃん返りのような症状がちょこちょこありましたが、今では大分落ち着いてもとの愛彩に戻ってきました。

怜が泣いていると一目散に怜のところにいって頭をなで「じょぶよ。愛彩おるから(←大丈夫よ。愛彩がいるから、の意)」と日本語で言ったりします。ぶっちゃけ二歳児が、新生児のそばにいたところで大丈夫なことはひとつもないのですが、いいおねえさんになってくれたなぁとありがたく思います。

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