Monday 7 September 2015

二人目が八月三日に生まれました

一人目(愛彩)は帝王切開だったので、二人目も帝王切開になるかと思いきや、二人目は自然分娩で生まれてきました。今のイギリスの国の方針では、一人目が帝王切開だったママもできるだけ二人目は自然分娩で生ませましょうという動きがあり(自然分娩の危険度の高いママは別ですが)、複数の助産師さんにお医者さん、麻酔師さんのチームの熱意に助けられて、20時間かかりましたが無事に自然分娩で二人目の子供を生むことができました。

日本ではあまり一般的でないらしい、エピジュールという麻酔を今回も打ってもらいました。普通の部分麻酔と違って、下半身の動きや感覚は保ったまま、痛みを飛躍的に軽減する夢のような麻酔で、個人的にはエピジュールなしのお産なんて考えられません。とはいっても、お産が全く無痛であったかというとそんなことはなく、エピちゃんを打ってもらうまではそれはそれは痛かったです。

陣痛が始まったのが午前10時ごろ。日曜日だったので、お友達とブランチをしている最中でした。ブランチをするカフェに行く電車の中で痛みは始まったのですが、予定日より二週間近くも前だったので「どうせ前駆陣痛だろう」と思っていました。ところが、楽しくブランチをしているうちにどんどん痛くなり、「でもやっぱり前駆陣痛だろう」と無視していましたが、そのうち「もしかしてヤバいかも?」という痛さになり、とりあえずタクシーで家に帰ることに。タクシーの中でも「前駆陣痛かも...っていうか本当の陣痛だったらやだな〜」という気持ちと、「ブランチの最中にタクシーで帰宅しといて本当の陣痛じゃかったらかっこ悪いなぁ」という変な見栄の気持ちの二つ(どっちの気持ちも不謹慎ですが)が胸中を去来しておりました。

産休に入る前までは、仕事とママ業で慌ただしい毎日。もちろん楽しいのですが、「自分の好きなことをする時間」がほとんどありません。でも産休に入ると、愛彩が保育園に行っている間はずーっと自分の好きなことができるわけです。が、そんな夢のような自由な時間も下の子が生まれるまで。ということで、予定日の前までに映画に行っとこ〜♪とかマッサージしに行こう♫とか、マーティーも有給をとって二人だけでデートしよ〜♡とか、ワクワクな計画が目白押しだったのです。なので「予定よりもあんまり早く生まれて来ないでくれ〜」と毎日祈るような気持ちだったのですが、そんな願いも空しく本当の陣痛はあっさりと予定日より随分早くやってきました。

愛彩のときの経験から、「どうせ早く病院に行き過ぎても家の帰されるし(←イギリスでは陣痛が始まってても子宮口がある程度開いてないと自宅に帰されます。)」とのんびりしていました。「陣痛と陣痛の間が3分になったら病院だったっけ?(ちなみに陣痛はずーっと続くわけではなく、波があります。痛い時と痛くない時を繰り返しますが、だんだん痛い時が長くなり、痛い波と波の間が短くなります)」とふたりで言い合いながら陣痛と陣痛の間を計ってみたら4分ほど。「まあどうせあと数時間は自宅にいたほうがいいよね」なんて言いつつ、マーティーがウェブサイトで確認したら「陣痛と陣痛の間が5分になったら病院に行きましょう」と書いてあるではありませんか!しかも、二人目以降は陣痛が始まったらすぐ出て来るというではないですか!知り合いのママは病院に行ってから14分で生まれたと言うし、今すぐに病院に行かなくちゃ!とワタワタ。速攻で近所の友人に連絡して愛彩を預かってもらうことに。病院に行く車の中で、愛彩に「ママは赤ちゃんが生まれるから、今日は○○くんのママとパパのお家に泊まってね。赤ちゃんが生まれたらすぐに迎えにいくからね」と説明しました。不安そうな、でも覚悟を決めた目でこっくりうなずいた愛彩の顔を今でもはっきりと思い出せます。たった二歳でも、子供ってこういうことはちゃんと分かるものなんだなぁと感心しました。

さて、病院に着いて助産師さんに検診してもらうと、「子宮口がもう4cm開いているから、(子宮口が10cm開くと生まれます)病院で待機してくださいね。もう少し開くように、散歩したり階段の上り下りをしてください。院内のカフェでご飯を食べてきてもいいですね。破水したり、出血したり、生まれそうになったらすぐに病棟に戻ってきてくださいね。」と言われました。

ということで、陣痛が3分おきにきている状態でカフェへ行くことに。これが第一子だったら「え?この状態で飯を食えと?!」とおったまげたと思います。この時点で陣痛は普通にしゃべっていられないほど痛かったのですが、二度目ですので「まあ、そうだろうね」とエレベーターではなく階段を使ってカフェへ向かいました。「このしゃべってられないくらいの痛さが何時間も続くのよ〜。その間は痛み止めももらえないし(状況によりますが)、子宮口がもっと開くか破水するまで待ってるしかないのよ〜ん」ということが、二度目にはもう分かっていますからね。で、この待っている間のシュールなことよ。カフェで普通にご飯を頼み、普通にテーブルに座り、普通にくだらないことをマーティーとしゃべります。陣痛の時はしゃべっていられないくらい痛いのですが、陣痛と陣痛の間は平気なので、
マーティー:「お産が終わって一番食べたいものってなに?」
私:「そうだな〜。米がいいかなぁ。それとも...」
と、普通に楽しく会話をしている最中にいきなり「うぅ」と低いうなり声をあげ、無言になって席を立つ私。陣痛が始まると、じっと座っているともっと痛いので、腰をさすりながらウロウロと歩き回ります。それをやはり無言で見守るマーティー。一分ほどすると私が席に戻り「やっぱり米がいいかな。おにぎりとか」と何事もなかったように会話が再会されます。それが3-4分ごとに繰り返されます。

そんなシュールな時間を小一時間過ごしたら陣痛がさらに強くなったので、病棟に戻りました。運悪くその日は通常よりずっとお産が多かったらしく、「助産師があと10分で検診に来ます。破水や出血があったらこのボタンを押してください」と言われた3時間後(!)に助産師さんがやっと登場。その間、マーティーが受付けに数回「助産師さんまだ?」と聞きにいってくれたのですが、「今、ちょうどお産が重なってて助産師さんがいないのよ〜」と言われ続けました。3時間後に助産師さんが検診し「わぁ、もう6cmも開いてるから、病室を変わりましょう」とワタワタと分娩室に入りました。

余談ですが、病室に入ってから、すぐにモニターをお腹に付けられ、赤ちゃんの心音と陣痛の強さを計っていました。陣痛の強さは0から100までの数値で表されるのですが、
私:「ああ〜、今のすっごい痛かった!80超えた?」
マーティー:「惜しい!78だったよ」
みたいなおバカなゲームをやっておりました。
助産師さんを待っている3時間の間にスコアは常にマックスの100になり、ゲームは中断となりました。

分娩室に入るなり、「エピジュールお願いします!」と速攻でお願いしましたが、これまたお約束通り、お産が重なっていて麻酔師さんがつかまりません。お医者さんの一人に「ごめんね。あと一時間くらいで麻酔師さんが来るから」言われ、「一時間も待ってたら生まれてしまうやんか〜!!エピなしであそこ切ったり縫ったりなんて絶対ヤダー!!」と心の中で強く思いました。そしてさらにお約束通り、「あと一時間で来る」はずだった麻酔師さんは他の緊急オペなんかが重なり、来るまでに4時間かかりました。「エピなしで生みたくない」という気持ちが届いたせいなのか、子宮口は6cmから開かなくなってしまい、希望通りエピジュールをしてもらいました。エピジュールは脊髄から打ってもらうのですが、赤ん坊が横腹を足で踏ん張っているせいで背骨が曲がっており、針がなかなか入りません。パニクる麻酔師さんが背中に針をさしながら「あ、しまった」なんて背後でつぶやいていて(「しまった」ってなに!?)と、かなりスリリングでした。

とにもかくにも無事にエピジュールを打ってもらい、効き始めたときの安堵感といったら!エピちゃんありがとう!麻酔師さんもありがとう!世界よありがとう!ていう感じでした。本当に痛いのが飛んで行くのですから、今世紀のイギリスで子供生めてよかった〜。その後もマックスで陣痛は続いていたのですが(でもエピちゃんのおかげで痛くない)、6cmからなかなか子宮口が開かず、助産師さんが人工的に破水してくれることに(先がギザギザ鍵型になっているプラスチックの細い棒みたいなものを子宮口から入れて赤ちゃんと羊水の入っている袋を破ります)。すると、羊水の中で赤ちゃんがウンチをしていることがわかりました。

お医者さんから「赤ちゃんがウンチをしているというのは、赤ちゃんがストレスを感じているサインなので、あんまり長く待てません。あと一時間して子宮口が全開しなかったら帝王切開にしましょう」と言われました。この時、マーティーも私も「帝王切開になるんだろうなぁ」と思っていました。が、一時間後に助産師さんが見てみたら子宮口が全開していました。

ここから先はマラソンの最後のトラックを走っている感じでした。エピジュールのおかげで痛みを感じないかわりに、「いきみたい」という感覚もないので、助産師さんがどうやっていきむのかを丁寧に教えてくれ、お医者さんが三人、助産師さんが一人、麻酔師さんが一人のあわせて五人が見守る中、「さぁ、いきんで〜!」と言われ、教えられた通りにやってみると、五人の医療関係者が「その調子よ!」とか「がんばれ〜」とかおのおの応援してくれました。五人の大人(うち2名は男性)が夢中で私の股間を見つめながら応援してくれる姿は、感動しましたがかなりシュールだと思いました。「おお〜、これが自然分娩のラストスパートか!」と感激しながら、がんばっていきみましたが、エピジュールの効果であまり感覚がなく、「本当に赤ちゃん出て来るのかな」とかなり懐疑的でした。なので一時間ほどいきんだ頃、助産師さんに「頭がでましたよ!」と言われたときは「ええ〜!まじで?」とびっくりしました。その後もう1回いきむとずるーっと赤ちゃんが出てきました。

愛彩のときは帝王切開だったので、赤ちゃんについている血などをきれいに洗ってから渡されましたが、今回はまだぬるっとしたままの赤ちゃんを渡されて、これまた「どひゃ~(←死語)」とびっくりしました。最初の印象は「タマ、でかい!」でした。渡されたときの角度もあったかと思いますが、赤ちゃんのタマって体の小ささに対して大きいんですね。生まれた我が子の第一印象が、視界いっぱいに見えるタマでした。男の子か女の子かをあえて調べないで出産したので、赤ちゃんの顔を見る前に「男の子だったか!」と確認できました。赤ちゃんを抱いて顔を見ているうちに、涙がぶわーっと出てきました。横ではマーティーも泣いていました。助産師さんや麻酔師さんがもらい泣きしていました。みんなが「よくがんばったね!」「おめでとう!」と何度も言ってくれました。私は生まれてきた赤ちゃんに方言で「ようがんばったね~。偉かったねぇ。」と泣きながら何度も言いました。愛彩の時も感動で涙しましたが、最後に医療関係者の方々も一丸となって「がんばれ、がんばれ」と応援してもらえたのは初めてで、フルマラソンを走りきった人(走りきったことないんですが)のような気分でした。



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